すでに純然たるメード・イン・ジャパン製品は数えるほどしかない。量産品は各国で造られた部品のアセンブリ(組み立て)であり以上、厳密な意味でなくても「Made in Japan」を謳えなくなっている。
それでも「日本品質」を維持したモノづくり、例えば一眼レフカメラやレンズのようなものは存在するわけで、それらをどう表するのか、表すればいいのか。
その一つの答えをFREETELは「Made by Japan」という形で示した。海外生産でも製品化に当たっては日本品質を維持し、「日本によって造られた」製品というわけだ。
もちろんFREETELのこうした考えは珍しいわけでもなく、かなり以前から大手企業が行ってきたことだが、「Made by Japan」という言葉を打ち出したのは同社の功績といっていい。
だからといって、同社の製品すべてが「Made by Japan」の名に値するものなのかといえば、そうとは言えない。例えば通話機能のみに特化した同社のフィーチャーフォン「Simple」は期待を裏切る出来だった(漢字表示の電話帳が50音順に表示できない)ように、「FREETEL 雅」(スマホ)のみを「Made by Japan」と謳うのか、あるいは今度発売予定の新製品全てが「Made by Japan」と謳えるできなのかはもう少し待たなければ分からない。
しかし、同社が「Made by Japan」を打ち出した意味は大きい。それはスマホの国内販売だけにとどまらず海外販売を視野に入れているからで、その際「Made by Japan」が一つのブランドになることを計算しているからだ。
たしかに「雅」を見る限り、それまでの「安いが、性能は一昔前のスマホ」という低価格スマホではない。Androidは最新の5.1だし、主カメラは1300万画素、RAM2G、ROM32Gというスペックはミドルレンジ。それでいて価格は2万円を切る安さ。「安かろう、良かろう」スマホといえる。
今後発売する機種の位置付けにもよるが、もし「雅」路線を続けるなら、国内以上に海外でも「FREETEL」ブランドは高く評価されるだろう。
メーカーのあり方が変わる
工業関係企業の中にはTPP(環太平洋パートナーシップ協定)を歓迎する向きもあるが、関税撤廃は自国輸出有利に働くだけはない。輸入品の関税も撤廃されるわけで、あらゆる分野で競争が激化するのはほぼ間違いない。そうなると生き残れるのは自ずと限られてくる。
では、どういう企業が生き残れるのか。
まず、三ちゃん経営の零細企業は真っ先に大打撃を受け潰れる、と思われている方は多いだろうが、むしろ逆で、そういう零細企業の方がしぶとく、と言うと多少語弊があるが、生き残っていくだろう。因みに「三ちゃん経営」とは父ちゃん、母ちゃん、兄ちゃんの家族3人で経営している零細企業のことである。
なぜ、経営基盤が弱い、三ちゃん経営の零細企業の方が生き残る確率が高いのか、それこそ間違いだと、指摘されそうだが、無条件に三ちゃん経営の方が、あるいは零細企業の方が生き残れると言うつもりはない。あくまで「○○」のという条件付きだ。
さて「○○」の中には何が入るのか。一つは「伝統工芸分野」であり、もう一つは「Made in Japan」である。
もう少し平易に言うと、いまやほとんど衰退産業になっている、手作りの伝統工芸分野の作品。これらはもともと大量生産に向かない、できない製品である。故に近代資本主義社会下では儲からない。
逆の見方をすれば、手間暇かけた少量生産の手作り製品だけに競争相手がいないか、いてもごくわずか(儲からないから廃業が相次ぎ同業者数が激減)だから、市場は小さくても作り手も少なく縮小均衡。故に、経費をかけない「三ちゃん経営」的な零細企業の方が生き残っていける。
しかも、インターネットの普及のおかげで、それらをうまく活用すれば市場は世界に広がる。といっても販売数が劇的に増えるわけではないが、世界には高品質のMade in Japan製品を求める人がいるから、TPPの正負の影響をともに受けず、生き残っていけるだろう。
逆に厳しくなるのは、コストカットでMade in Japanを捨て(ざるを得なくなり)、中品質程度以下の部品を仕入れてアッセンブリした製品を作り続けている中規模製造業ではないか。
(4)に続く
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